「あゆかさんはトルコいつまでいるんですか?」「えっと1月まで…3カ月弱ですね」「えええなんで!?」
そうだった、そうだった。こんな感じだったよなぁ。旅人同士の会話って。トルコ、イスタンブールの居心地がいいことに定評のあるゲストハウス。集まってくるのはほぼバックパッカ―だ。世界一周者、長期休みの大学生、何をやっているのかよく分からない旅人。旅行者というより旅人という方がしっくり来る人たち。きっと傍から見たら私もその部類に入るんだろう。「次はインドに行くつもり」「イラン行きました?陸路で行けます?」「トルコ数日のつもりだったんだけど、つい長居しちゃったよ~」盛り上がる会話に交じりながら私は少し異色だった。「トルコ」一カ国に3カ月もいる。旅人だけど旅人じゃない。なんだかよく分からない立ち位置の自分。5年前、私も8ヵ月間世界一周をした。その時は旅人との会話が楽しくて、楽しくてしょうがなかったのを覚えている。その場で盛り上がって次の国に一緒に行ってしまったり、オススメの国を聞いてその場で予定を変えてしまったり、「ああ、今私旅をしてるんだ!」そんな嬉しさを日々噛みしめてた。そんな8ヵ月間だった。その時と何が違うんだろう。というか本当に違うんだろうか。どうしても旅人同士の会話に素直には入れないのだ。「違和感」と言い切るのは簡単だけど、そんな一言で片づけていいものなんだろうか、これって割と突き詰めて考えた方がいいんじゃないだろうか。「違和感」って分かりやすいようで分かりにくい表現だなぁと思っている。何がしっくりこないのか、突き詰めることを諦めちゃいそうな言葉。そう思って今書いている。
端的に言うとわたしは今分かりやすい目的があってトルコに来ている。「トルコに住んでいる日本人にインタビューして発信する」まぁこんなに分かりやすい目的もない。それをいわゆる旅人に説明すると「すごいね」「1つの国にそこまで思い入れがあるのっていいね」と褒めてもらえることが大半だ。でもこれって本当にすごいことなんだろうか。日本にいる時から旅人だった人と関わる度に思っていた。「旅に目的は必要か」
「世界一周 目的」とかでググるといくらでも出てくる、すごい人たち。みんな本当に色んな事をやっていてそれが将来にも繋がっていて、ああこんな風に慣れたらなぁと思わされる人たちだ。なんだかそういうすごい人になりたくて、でもなれなくて焦る。何のためにすごい人になりたいのかも自分でよく分かってないのに。「私も何か決めた方がいいんじゃないだろうか」そんな不安に無意識のうちに掻き立てられる。「目的を決めて旅をすることのススメ」そんなタイトルのWEB記事だって山ほどある。目的のために旅をしているのか。そもそも旅とは何なのか。ついそんな哲学的なことを考えたりしてしまう。
これは私の持論なので、気を悪くしないで聞いてほしいのだが、目的のある旅ない旅どっちがいいかなんて心の底から下らないと最近思うようになった。それは私が5年前に目的を決めない旅をして、今目的を決めて旅をしている中で思ったことだ。気持ち的には、目的を決める旅をしよう!とかっこよく語りたかったけれどそんなに上手くいくもんでもなかった。というのも5年前にした旅で得たものは、「自分のやりたいことに忠実だった自分」だと思っている。何をするのも、何処に行くのも、何を食べるのも自分で決める。そんな時間を社会人になる前に得れたこと。気付くのには少し時間がかかったけれど今、それが私の根幹を担っている。5年前目的を決めずに旅をして良かったと思っている。
今目的を決めて旅をしていて、どうかと言うと自分に向き合う時間が意図せずとも多くなった。多くの日本人に会って話し、またSNS等で発信する中で「私のやりたいことは何なのか?」「やりたいことと旅の目的にズレはないか?」嫌でも考えざるを得なくなった。答えの出ないことが殆どだけれど、「自分のやりたいこと」と向き合ってすったもんだしている。そしてその時間が与えられている。旅の醍醐味だと思う。
結局本質は同じことだと思うのだ。人に会う、ものを食べる、景色を見る、移動する、そしてそれの合間に生まれる余白の時間。自分と向き合う時間。それが一番大事なのだと私は思う。「自分がなにをしたいのか、自分に忠実に向き合う時間を得ること」
別に大層なことでなくてもいい。今日一日をどう過ごすか、それを決めること。その積み重ね。それこそが旅の本質であって、目的を決めるかどうかは目的を決めることによって、自分と向き合う時間を得る手助けでしかないのだと思う。別に絶対じゃない。
目的を決めるとなんかすごそうに見えるけど、他人にすごいと思ってもらいたくて旅をするんじゃ本末転倒だ。旅のよしあしを決めるのは自分であって、他人じゃない。自分が納得していること、それが一番大切なんだ。結局目的を決めていない旅人と話して感じた違和感は別に違和感じゃなくて、自分のやりたいことに向き合う時間の使い方の違いでしかなくて、本質は一緒なんだなと今は理解している。引き継き旅を楽しみたいと思います。